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独特の目線でイタリア・フランスに関する出来事、物事を綴る人気コーナー
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文と写真 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA

レトロモビル2023

ヨーロッパ屈指のヒストリックカー・ショー「レトロモビル」が2023年2月1日から5日までフランス・パリのポルト・ド・ヴェルサイユ見本市会場で開催された。

レトロモビルは今回で第47回。出展社・団体数は500以上を数え、展示車両も1000台を超えた。2020年以来3年ぶりの通常開催ということもあり連日賑わいをみせ、総入場者数は過去2番目に多い12万5千人に達した。

特集も「ル・マン24時間の100年」や「キャンピングカー」など、多彩な企画が組まれた。公式オークションであるアールキュリアル社のセールの落札総額は3550万ユーロ(約51億2千万円)に達した。

メーカー出展も過去の停滞期を脱し、その数は12に及んだ。彼らの多くは歴史車両展示とともに、最新電動車のアプローチやプロモーションも忘れていなかった。たとえばシトロエンは2022年9月に発表したコンセプトカー「オーリOli」を初めて一般公開した。フォルクスワーゲン・コマーシャルヴィークルズは「ID.Buzz」を、T1やT2といった歴代トランスポーターと並べることで、デザイン的・コンセプト的共通性を強調した。

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レトロモビル2023でルノーは電動化キット「レトロフィット」を公開。これはルノー「4」をベースにしたコンセプトカー「スイートno.4」。

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シトロエンはEVコンセプト「オーリ」を初めて一般公開した。4200mm×1900mm×1650mmというサイズは、小さな寸法のボディが多いヒストリックカーの脇では、想像以上に大きく見えた。

ルノーからソレックスまで

いっぽうルノーは、2023年1月25日に発表した電動コンバージョンキット「レトロフィット」を初めて一般公開した。

フランス南部コート・ダジュールのカシスを本拠とする「Rフィット」とのコラボレーションで実現したものである。第一弾として「ルノー4」用キットが、レトロモビル初日の2月1日にオンラインで販売開始された。

バッテリーは容量10.7kWh のリン酸鉄リチウムイオン式。いっぽう変速機はオリジナルを流用する。車両の重量配分はオリジナルと同等になるよう工夫されているという。16A-220V家庭用電源による満充電までの所要時間は3.5時間。航続可能距離は80キロメートルとされている。保証期間は2年だ。

価格は取付費・付加価値税込みで17,900ユーロ(約258万円)だが、フランスでは多くの自治体が導入している環境対応車補助金制度の恩恵を受けられる。ルノー「5」用は2023年9月に発売、続いて初代「トゥインゴ」用もリリース予定だ。

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レトロフィットが施された初代ルノー「5」。

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発売30周年を迎えた初代ルノー「トゥインゴ」用のレトロフィット・キットも将来発売される。会場には、社内デザイナーの手によって90年代のローライダー風にドレスアップされた仕様が展示された。

別のパビリオンでは、往年のフランス製モペッド(ペダル付き原付き二輪)用コンバージョン・キットを手掛ける業者も出展していた。「ノイル」という名のスタートアップ企業で、「ソレックス」「プジョー103」といったモデルに出力1.4kWのモーターを装着することにより、航続距離30〜60キロメートル、最高時速32〜45キロメートルを実現している。

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モペッドのコンバージョンを手掛ける「ノイル」のスタンドで。電動化を施された「プジョー106」。


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プジョー106のオリジナル・エンジン(左)と、換装用のモーター(右)。


看過してはいけない現象

実は2022年10月に同じ見本市会場で開催されたパリ・モーターショーにも、電動車に改造するキットを手掛ける業者が複数出展していた。

背景には、パリやリヨンなどで段階的に強化されている「クリテアCRIT’Air」と呼ばれる厳しい自動車進入規制がある。たとえばパリでは2021年6月から、05年以前登録のディーゼル車および96年以前登録のガソリン車が反則金付きで禁止された。二輪車も2000年5月以前に登録された車両は進入できない。そうしたクルマは、夜間・早朝と週末しか走行が許されていない。

いっぽうで電動車は、あらゆる規制から除外される。ただし前述のルノー4用レトロフィットのコンバージョン価格を見ればわかるとおり、決して安くはない。そもそもベースとなるルノー4の中古車を用意する必要がある。参考までにルノーのサブブランド「ダチア」のフルEV「スプリング」の新車は、2万1千ユーロ(303万円)で買える。プジョー103用コンバージョン・キットも、取付費込みで899ユーロ(約13万円)だ。こちらも中国製スクーターの新車が買える値段である。にもかかわらず、一定のマーケットが生まれる兆しがある。

いったい、どのような人々が依頼するのか? その質問に答えてくれたのは、電動化したプジョー504クーペをパリ・モーターショーに展示していた業者だった。「何台も所有する古典車コレクターの方は、うち1台を普段の街乗り用に、ためらわず電動化します」。

しかし、筆者はもうひとつ理由があると考える。それを確信したのは、同じ業者による、次の言葉だった。
「創業4年になる我が社で、これまでのお客様のうち25%、つまり4人に1人は女性でした。彼女たちは、市街地をエレガントに走りたいのです」

最新のクルマのデザインに欠如している、古いモデル独特の強い個性と温かみが、人々にコンバージョン・キットを選択させている。そうだとすれば、新車の商品企画に携わる人たちは、けっして看過してはいけない現象だと筆者は思うのである。

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前輪をローラーで駆動するソレックスの特徴的なエンジンもモーターに換装する。510ユーロ(約7万3千円)から。所要48時間も売りにしている。ちなみにノイル社はモーター換装済みの中古ソレックスも販売していて、そちらは999ユーロ(約14万4千円)から。

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大矢アキオ ロレンツォAkio Lorenzo OYA在イタリアジャーナリスト/コラムニスト/自動車史家。音大でヴァイオリンを専攻。日本の大学院で比較芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。自動車誌...
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