文と写真 大矢アキオ ロレンツォ Akio Lorenzo OYA

イタリア中部ポッジボンシの「デ・マルコ・パーツ」で。2024年12月、廃業ディーラーから入手した品の中には、看板も含まれていた。左からマッシモ社長、スタッフのミンモ、アッティリオ、クリスティーナ、ラミン各氏。
■その量、トラック2台分
「大収穫があったから見に来なよ」。そう声をかけてくれたのは、開店間もなくから筆者が本欄で追ってきたフランス車パーツショップの社長、マッシモ・デ・マルコさんである。2024年暮れのことだ。彼がイタリア中部トスカーナ州ポッジボンシで営む「デ・マルコ・パーツ」については第19回https://carcle.jp/UserBlogComment?UserID=10568&ArticleNo=19
を、彼がオーガナイズする「イタリアン・ルノー4フェスティバル」については、第31回https://carcle.jp/UserBlogComment?UserID=10568&ArticleNo=31
を参照いただきたい。

デ・マルコ・パーツの本社入口。2019年創業の当初から通販にも力を入れており、すでに50以上の国と地域に発送してきた。

倉庫の一角にはルノー「4」の未再生ボディも数々。手前の黄色い個体は、フィレンツェで見つかったという希少な3段変速仕様である。

マッシモ・デ・マルコ社長。とりわけルノー4、「シトロエン2CV」、そして「フォルクスワーゲン初代ビートル」の部品に関しては、多くの顧客を獲得している。
翌日さっそく店を訪ねてみると、開業以来いつも気持良いくらい整然としていた倉庫内に、溢れんばかりのパーツが積まれている。それらはサービスフロントまで達している。一見の客は、どこが窓口かわからない状態だ。ただ事でない。

サービスフロントを塞がんばかりに積まれたルノーのパーツ。
「すべてはルノーのNOS、それも純正部品だよ」と、マッシモさんは教えてくれた。NOSとは、New Old Stock=新古在庫のことだ。きっかけは、1カ月前に受け取った1本の連絡だったという。「相手は320キロメートル離れた北部の町、ロヴェレートにある元ルノーの販売店だった」。その店は、遠く1960年代から地域ディーラーだったが、少し前に権利を返上した。「その機会に、指定サービス工場にあった約半世紀分の部品ストックをまとめて売りに出したんだよ」。それをマッシモさんの店は、まるごと買い取ったというわけだった。ちなみにマッシモさんによると、同様の申し出は近年、イタリア全国の新車販売店からたびたび寄せられていたという。新車販売の低迷を背景に、廃業する販売店が多いためだ。

スタッフのミンモさんと、方向指示器レバーを確認する。彼らの右に並ぶ部品棚も、すべて今回引き取ったものだ。

部品棚の引き出し。マッシモさんも1段1段はまだ確認してない。そのひとつを開けると…

シャフトのシールが入っていた。

こちらはクラッチ部品。
商談成立後、マッシモさんはトラック2台を連ねて現地に向かった。積載にも丸2日を要したという。
「ルノーに関していえば、純正パーツは社外品よりも格段に品質がいい。だから、絶好のチャンスだった」とマッシモさん。またルノー「25」のテールランプユニットを見せながら、「こうした上級モデルの部品は絶版になりやすい。だから貴重なんだよ」と語る。補足すれば、ルノー「4」など人気車は、今日でも数々のサードパーティーによってアフターパーツが多数製造されている。対して高級モデルは生産台数が少ないうえ人気が限定的なため、社外品が限られている。残存純正品だけが頼りという部品が多いのだ。

オイルパン用ガスケット。

コンタクトブレーカー・ポイント・コンデンサーセット。マッシモさんによると、数社製が存在した。これはマニェッティ・マレッリ製。

ルノー「6」の燃料計もあった。
■整理には要3年
旧オーナーのもと、長年サービス工場で使われていた灰色のスチール製部品棚も引き取った。1段ごとに手書きで几帳面に記された部品番号は、あたかも昨日まで使われていたような雰囲気を匂わせている。いっぽうで、長身のマッシモさんでも腰の丈ほどある木箱には、頂上から底までぎっしりと部品が詰め込まれている。まだ何が入っているか、彼さえもわからない。
各部品を見ていると、どのモデル用かを言い当てるのを競うクイズができそうだ。ただし、そう言う筆者がわかったのは、恥ずかしながら前述のルノー25用テールランプと初代「エスパス」のテールゲートだけだった。

ルノーの部品番号も貼られたクライスラー純正「MOPAR(モパー)」エアフィルター。旧アメリカン・モータース(AMC。1987年クライスラーに吸収)がルノー傘下だった時代があったため、このような共通部品が存在した。

ホイールが積まれた一角。手前は「シュペール・サンク」用。

初代「メガーヌ」用のルーフ用クロスバー。その下に転がっている筒はポスターかと思いきや…

箱を開けてみると「19」用サイドモールだった。

初代「エスパス」のテールゲート。
今回の収穫を収めるため、すでにマッシモさんは隣接する別の倉庫を確保したという。だが作業を想像すると、部外者の筆者でも気が遠くなる。「従来のストック同様、すべてをきちんと整理するには、どのくらいかかるのか」という筆者の質問に、「3年はかかるな」とマッシモさんは答える。整理と並行して、撮影ボックスで1点1点写真に収め、自社ホームページやショッピングサイト「イーベイ」に掲載してゆくのは、スタッフであるミンモさんの仕事だ。果たしてどんなお宝が発掘されるのか。彼らの顧客のお楽しみは、間もなく始まる。
De Marco Parts
https://www.demarcoparts.com/en/
De Marco Parts e-bayサイト
https://www.ebay.it/str/demarcoparts

木箱の中身発掘は、これからのお楽しみ。

1992年に制定され、2020年まで使われた旧ロゴの看板も。