つい先日、世間でいうお盆休み最終日ともいえる16日の日曜日のことだ。ボクは秘密の隠れ家(最近一部でそう呼ばれているらしい)ともいえるバル・イソレッタの小嶋氏の下を訪れていた。バルは少々駅から遠いがクルマ好きが集まるお店だ。ただビアンキやプジョー106のようなクルマが3台も入れば一杯になってしまう珈琲店である。そのこともあって事前に連絡を入れるのが、来店者の常になっている。どうもそこから秘密の隠れ家的なお店として浸透してきたらしい。
店舗は期間営業でオーナーが国内にいる間のみの営業となっている。この夏は16日が最終日だったこともあり、居を都内に移してからは久しぶりに訪問となった。変わらないお店の雰囲気と小嶋氏の持ち帰るイタリアの国内での話から始まり、いつしかボクの引っ越しの話になった。そこから少し前に氏のご親類が経営していた商売を畳まれたという話になった。なんでもお母様の父上は酒屋を営んでいたとのこと。その家の仏壇から少々珍しいモノが出てきたので引き取ってきたというのだ。ボクは出されたアイスカフェオレを口にしながら傍らの額縁に目をやった。
「伊太利国トリノ市 ベルモット製造販売業アルチニエンドローシ会社」そして文の終わりにはこう記されていた。「日本帝国 宮内省」
・・・なんじゃこりゃあ‼ 目を見張り向き直るボクに小嶋氏はChatGTPに聞いたところ、このアルチニエンドローシなる会社はマルティ二を製造している会社でお爺様はその輸入または販売に関わっていたのだそうだ。マルティ二といえばあのモータースポーツでもおなじみのマルティ二カラーで知られる企業であり、WRCやル・マンを知るものなら一度は目にしたことがあるロゴである。小嶋氏がイタリア文化に親しんでいることはボクも良く知るところだが、まさか祖父母の代に遡ってのイタリア親交があるというのは驚いた。
イタリアの食文化に詳しい方が皇室にベルモットを納品されていた証明なのでマルティ二社にも報告は行っていると思われる。とのことだったので早速に飾ったのだという。
その反響はかなりのもので中にはネットで同じものを見たことはあるが、本物をお持ちとはと驚かれた方も現れた。その方が言うにはこの年(1922年)は英国皇太子来日があったり、東京會舘がオープンしてバーが出来たりすることで、マルティ二を用意する環境があったのでは?とのことだ。また同年は昭和天皇が成人式を向かえた翌年ということもあり、何か祝い事で必要だったのかもと想像できるとも言われた。
この証書には1922年、トリノのMartini&Rossi社のベルモット『MARTINI』が日本帝室御用達になったことを示しているという。その証書を持つ酒屋とはつまりそういうことである。実に104年もの時を越えて再び子孫の下でイタリアとのつながりを証明するに至った1枚の文書。クルマ好き、イタリア好きなオーナーであれば、是非一度訪れて原書を確認してみてはいかがだろうか。
こんな面白いネタを聴いてしまってはそのうちマンガか何かで書けないものかと、つい思案してしまう。まだ書きかけの話もあるというのに、ネタにだけは当面困ることはなさそうだ。